オーバー・フェンス(2016年 東京テアトル/函館シネマアイリス) [喜]
美しく壊れかけた男と女の物語。
白岩義男(オダギリジョー) 田村聡(蒼井優) 代島和久(松田翔太)
森由人(満島真之介) 原浩一郎(北村有起哉) 尾形洋子(優香)
松沢匠(島田晃) 勝間田薫(鈴木常吉) 他
家族のために精一杯働いていたつもりの白岩だが 妻の洋子からは 家庭を顧みない夫と見限られ 東京から故郷の函館に戻っていた。
が 実家には顔を出さず 職業訓練校とアパートとの往復の毎日で 2本の缶ビールと弁当の惰性の日々。
特に楽しみもなく ただただ働いて いつか死ぬ・・・そう思う毎日だった。
ある日 職業訓練校の同じ課に通う代島に連れられて行ったキャバクラで 風変わりな若いホステス 聡と出会う。
「名前で苦労したけど親のことを悪く言わないで 頭悪いだけだから」と言いながら鳥の求愛を真似る聡。
ある種の危うさを持つ聡だったが 自由と苦悩の狭間でもがく彼女に 白岩は惹かれていく・・・
鬱屈した白岩の心象は徐々に変化していくが 聡と噛み合わない部分も多く・・・それでも同じ時を過ごしたく 過ごしていくうちに孤独と絶望しか知らなかった者たちに ぼんやりと 生きる先が 見えてきたように思える・・・
「海炭市叙景」「そこのみて光り輝く」に続く 「函館三部作」の最終章。
三作とも 男女の情愛に絞り込み それ以外の情景を意図的に省いたかのような 独特の描写です。好き嫌いが分かれる作品だとは思いますが 一見の価値は十分にあります。
(敬称略)
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