海炭市叙景（2010年 スローラーナー）

その冬　海炭市では造船所の縮小が発表され　多くの労働者が解雇された・・・



「まだ若い廃墟」
井川帆波（谷村美月）　　井川颯太（竹原ピストル）
造船所の一部が閉鎖され　多くの労働者がリストラに遭った。颯太もその中の1人であり　職を失ってしまった。
大晦日の夜　妹の帆波と寂しく年越しそばを食べているうちに年が明けた。なけなしの小銭を集めて　初日の出を見に山へ登るが　帰りのロープウェイ代は1人分しかなく　
颯太は歩いて山を下りることに・・・



「ネコを抱いた婆さん」
工藤まこと（山中崇）　　トキ（中里アキ）
70歳になるトキは1人暮らし。地域開発のため　周辺の家は次々と転居し　トキの家だけが残っている。市役所の職員　まことはトキに立ち退きを説得するが聞き入れて貰えない。そんな時　トキの飼い猫である　グレが姿を消してしまった。

「黒い森」
比嘉春代（南果歩）　　比嘉隆三（小林薫）
プラネタリウムで働く49歳の隆三。仕事から帰ると妻の春代は　派手な洋服に厚化粧。夕飯の準備もせずに夜の仕事へと出掛けていく・・・口を利かなくなった息子にも苛立ちを感じている隆三は　ある日　春代に仕事を辞めさせようと店へと向かう・・・



「裂けた爪」
目黒晴夫（加瀬亮）　　目黒勝子（東野智美）
代々続くガス店を継いだ晴夫。新しく始めた浄水器販売の事業が上手くいかず　家庭では再婚した元同級生の勝子が　息子を虐待している。
ある日　誤ってガスボンベを足の上に落としてしまい　膿んだ足を引きずり帰った夜　息子の顔にはまた　殴られたアザが・・・

「裸足」
荻谷達一郎（西堀滋樹）　　萩谷博（三浦誠己）
路面電車の運転手を務める達一郎は　偶然電車の前を通り過ぎる息子の博を見かけた。東京で働いていて　仕事のために地元へ帰っていた博だが　達一郎とは会おうとしなかった。年が明けた昼下がり　墓参りで鉢合わせた二人は　帰りのバスに揺られながら数年ぶりの短い会話を交わす・・・

様々な事情を抱えた　様々な人たちが　すれ違いながらも　懸命に生きている・・・

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（敬称略）

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