紙の月（2014年 松竹）

バブルがはじけて間もない1994年が舞台。子供が出来ない意外は平均以上の　まっとうな人生を歩んでいた主婦が　大学生との出会いをきっかけに　歯車を狂わせ　矛盾と葛藤を抱えながら犯罪に染まっていく・・・



梅澤梨花(宮沢りえ)は　夫の正文(田辺誠一)　と穏やかな日々を送っている。契約社員として勤務する「わかば銀行」でも　仕事への取り組みや周囲への気配りが好意的に評価され　上司の井上(近藤芳正)からも信頼を得ている。
勤務先では　厳格なベテラン事務員の　隅より子(小林聡美)や　今時の若者で窓口係の　相川恵子(大島優子)ら　が働いている。
一見　何不自由のない生活を送っている梨花だが　自分への関心が薄く鈍感なところのある夫との間には空虚感を感じていた。



ある夜　梨花の顧客で裕福な独居老人　平林(石橋蓮司)　宅で一度顔を合わせたことのある孫　平林光太(池松壮亮)　と再会した梨花は　何かに導かれるように彼と時間を共にし　逢瀬を重ねるようになる。そんな中　ふと立ち寄ったショッピングセンターの化粧品売り場で　支払いの現金が足りないことに気づいた梨花が手を付けたのは　顧客から預かっていた１万円だった。
銀行に戻る前に自分の口座から引き出して戻したが・・・これが全ての始まりであった。学費のために借金をしているという光太には200万を渡し　さらに顧客から預かった300万を自分の通帳に入れ　自宅で定期預金証書や支店印を偽造する……。



やがて横領はエスカレートし　光太との豪遊などへと流れていく。上海に赴任するという夫には同行せず　梨花は光太と高級ホテルやマンションで贅沢な時間を過ごす・・・　が　光太の行動にも変化が表れ　ある日　光太が大学を辞めたことを告げられる。そんな時　隅が銀行内で不自然な書類の不備が続いていることに気付き　不審に感じ始めていた……

幸せながらも　何か空虚感を持つ主婦が　大学生との不倫に溺れ　勤務先である銀行顧客の金を横領する・・・決してめずらしくはない題材ながら　宮沢りえ　と　池松壮亮　の表現力。そして　近藤芳正　や　小林聡美　のキャラクターで思慮深い作品になっています。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(敬称略)

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